こちらの記事に興味をもって頂きありがとうございます。
キャリアコンサルタントの渡邊です。
今日はリーダーシップについての書籍を紹介します。
【スタンフォード式 最高のリーダーシップ】
【スタンフォード式最高の〇〇】でシリーズ化されている本書ですが、このシリーズによくある批判として「アメリカとは人種や文化が違うので日本人向きではない。」等と言われる事もあります。
今回の著者はスティーブンマーフィー重松さん。
日本とアメリカのミックスの方で、両方のバックグラウンドを持つ方なりにニュートラルな内容を書かれている印象を持ちました。
むしろまだまだ日本に浸透していない様なリーダーシップ論も書かれているので日本人にもおすすめの一冊なので紹介させて頂きます。
リーダーシップとはリーダーの為のものではない
We are Leaders 「私たちはみな、リーダーである」
スタンフォード式最高のリーダーシップより引用
リーダーシップとは人を導く立場の人間に必要のものだと考えていませんか?
この本ではあらゆる立場の人達にとってリーダーシップが必要だと伝えています。
それは、自分が自分自身のリーダーになるという事です。
これからのVUCAな時代に生き抜く為には、「どこに向かい」「どう決断するか」を自分の意思で決め、自分の行動に責任を持たなければなりません。
そして、自分と共に生きる家族やコミュニティの為にも最良の行動を選択しなければなりません。
こうして自分自身のリーダーシップが身に付けば、実際に人を導く立場でも成果を出せる様になるというのがこの本の主旨となります。
今後、リーダーを目指されている方はもちろんですが、そうじゃない方にも読む価値のある書籍ではないかと思います。
リーダーの失敗例
リーダーとして役割をこなしている方はもちろん、部下としてリーダーを見ていた方からも感じた事のある失敗例がこの本では紹介されています。
ハッとさせられる方も多いかもしれません。
強すぎるリーダーは自分もチームも不幸にする
人を率いる以上、リーダーは強くあらなければならないと思いすぎていないでしょうか?
リーダーは部下に意見を言わせる余白を残さないといけません。
その為、リーダーは「完ぺきな人間ではない」と自分の弱さを認められる事が必要です。
その弱さや素直さが部下に率直に進言させる空気を作ります。
潔さや正直さのように、人間として信頼できるという実感の方がよほど大切だという事です。
リーダーシップ=優秀であるは間違い
もちろん個人として優秀であることは素晴らしい事です。
ですが、優秀な自分を見せることに固執していないでしょうか?
よく有るのが「話し方と言葉の選び方」
専門用語を多用して知識をひけらかす人を良くみかけますが、本当に優秀な人はその場にいるメンバーに合わせて理解できる言葉選びを行います。
プレイングマネージャーの陥りがちな罠
プレイングマネージャーは個人と組織の成果を両方求められる仕事です。
そこで個人の成果を残す事を優先していませんか?
個人の成果は全体の成果に繋がる事は事実ですし、リーダーとして個人の成果は出し続けないと相応しくないと思ってしまう気持ちは理解できます。
ですが、リーダー個人の成果よりも組織の成果に焦点を合わせたほうが、結果的に良い成果が生み出されるのは間違いありません。
そこで、この本では個人としての成果を出しつつ組織の成果を出せる理想のリーダー「アサーティブ・リーダー」を目指す事になります。
集団心理が個人を失わせる
集団は心理を追求するよりも、錯覚を求めている
スタンフォード式最高のリーダーシップより引用
人間は感情の生き物です。
たとえ本当に正しい事でなくても、正しいと信じれる事があれば人は安心してしまいます。
ただ世の中のほとんどには完ぺきな正解など存在しませんし、自分で考えなければでないものです。
その中で、「こうすればうまくいく」というカリスマ的なリーダーがいると一見すると上手にチームがまとまりますが、代わりに個性を失う事にも繋がります。
現状維持バイアスに気をつける
現状維持バイアスとは、人は新しい選択肢を回避する傾向があるという事です。
確かに変化は面倒に感じる時があります。
今までのルールを変えればマイナスな事が起きるかもしれないと思ってしまいますし、「今までのままでいいか」となる訳です。
選挙などでも「よく分からないから、とりあえず現職の人に入れておこうか」となります。
理想のリーダー【アサーティブリーダー】とは?
本書で目指すべき「最高のリーダー」とは、弱さを認めつつも積極性を発揮し、自分もチームも変えられる「アサーティブリーダー」という存在です。
では、アサーティブリーダーとはどんな存在なのでしょうか?
多くのリーダーは、メンバーに「威張り過ぎている」と思われているか、「頼りない」と思われているかどちらかの課題を抱えている事が多いです。
良いリーダーは強くても弱くてもダメでバランスが大事だという事になります。
アサーティブとは、「アグレッシブ(積極的)」と「パッシブ(受動的)」の中間でバランスがとれている状態です。
こうして図にしてもらえるとわかりやすいですね。
主に欧米のリーダーはアグレッシブになりやすく、日本のリーダーはパッシブになりやすいと言われています。
これが、「日本人は自己主張が弱くリーダーが不在」と言われる要因ですが、決してそうではありません。
アサーティブリーダーを目指す為には、「人を尊重する」「まわりの事を考える」といった「パッシブ」な要素を持ち合わせていないといけません。
なので、日本人は理想とするアサーティブリーダーに必要なパッシブな要素をすでに持っていると自覚する事から始め、そこから足りない部分を磨いていくというアプローチが可能だという事です。
では、そのバランスの良い最高のリーダーである「アサーティブリーダー」になる為の4つのリーダーシップをご紹介します。
オーセンティックリーダーシップ(本質的なリーダーシップ)
オーセンティックリーダーシップとは、ありのままの飾らない姿で人と向き合えるリーダーを指します。
リーダーシップ論でいうところの定義は、
- 「本当の自己(感情、考え)」を知る
- 「本当の自己」を積極的に、包み隠さず表現できるようになる
- 自分の人生の創造者として、「自分の人生のリーダー」になる
- 「信念に基づいて行動する
- 人から信頼され、頼りにされる
本書では、まずは個人としてオーセンティックになる事の大切さと伝えています。
本当の自分、ありのままの自分を表現していれば人々に信頼をもたらす存在となり、人を導くリーダーとしての力を身に付けることができるからです。
そして、オーセンティックリーダーシップを磨く「具体策」として次の5つが紹介されています。
- 「弱さ」を認める
- 「役割性格」を超える
- 「人」と比べない
- 自分の「生涯の大きな目的」を見つける
- 「超・集中状態」になる
役割性格を越えるというのは、「こうあるべき」を捨てて、個人として向き合うという事です。
特にリーダーという役割を得た時などに、理想とするリーダーのあるべき姿を演じてしまっていませんか?
上司だから、親だから、夫だから、女性だから、あらゆる役割性格が存在します。
それらの役割性格を脱ぎ捨てて個人として向き合う姿勢がオーセンティックリーダーシップを育てます。
ですが、行き過ぎた「こうあるべき」はありのままの自分で向き合う機会を減らす事になります。
そして「超集中状態」とありますが、現代人の47%が集中力に欠けているそうです。
ながらスマホ、ながらテレビなど、マルチタスクに慣れてしまった事も原因にあるようですが、「基本的に人間はマルチタスクをこなせない。シングルタスクの切り替えをしているに過ぎない。」という研究結果もあり、マルチタスクは、集中力がなく、効率も悪い行為だという事になります。
よって、マルチタスクで行っていた事を時間を分けてシングルタスクにする事で集中力が高まり、オーセンティックリーダーシップを磨く事に繋がります。
サーバントリーダーシップ(支援するリーダーシップ)
サーバントリーダーシップとは、人を育て、奉仕し、支援するリーダーシップを指します。
部下の能力を引き出して、主体的に活動できる支援を行います。
リーダーシップとは、自分が力強く引っ張る事をイメージする人も多いかと思います。
「自分が前に出る」という思考の裏側には2つの心理があります。
- 自分以外、信用できない
- 部下にナンバーワンの座を奪われたくない
もちろん、自分自身が成果を出し、力強く引っ張る事でチームを成功に導くリーダーもいます。
ですが、一人でずっと成果を出し続けるのも難しいですし、個人よりもチームの方が生産性が高いのは言うまでもありません。
サーバントリーダーシップを身に付ける為には、まずは自分の弱さを出して、部下にも弱さを出させるセーフスペースを作る事が重要です。
セーフスペースを作ったら、「語らず、質問をする」を実践する事でコミュニケーションを取る事に力を尽くします。
そしてサーバントリーダーシップに大事な考え方は以下の3つです。
- 自分が支援して得た成果は部下のもの
- 正直に、オープンに評価する
- 失敗の責任を取るのはリーダー
なかなかこの3つの考え方をきちんとできるのは難しいかもしれませんが、サーバントリーダーシップを実践する為には常に心にとどめておきたい重要な事です。
トランスフォーマティブリーダーシップ(変容をもたらすリーダーシップ)
トランスフォーマティブリーダーシップとは、自分にも他社にも変容をもたらす力をもったリーダーシップです。
この変容とは、本質から変わる変容であると同時に、自分が本来持っている可能性を引き出して開花させるという意味も含まれます。
まずは、自分を信じて変化させる事に注力します。
この本に書いてある事を実践し自分自身を変えていくのも良いかもしれません。
そうして自身を変化させる事を身に付けたら部下を変化させる事に意識を向けます。
部下を変化させるにはリーダーが変化させるのではなく、部下自身が「変化したい」と意志の力を持つように働きかける方がより強力な力になります。
その為にモチベーションコントロールが必要になるのですが、「報酬」や「ほめる」などの外的モチベーションではなく内的モチベーションへアプローチを行います。
内的モチベーションを正しく引き出す方法は以下の5つです。
- 「仕事の目的」と「メンバー個人の目的」をつなげる
- リーダー自身が変化し、「ロールモデル」になる
- メンバーが自分の仕事に「主体的」に取り組めるようにする
- 「メンバーの強みと弱み」を理解する
- メンバーの能力を高め、変化をうながす「チャレンジ・タスク」を与える
ちなみにチャレンジ・タスクとは、本人が成長しないと達成できないタスクの事です。
クロスボーダーリーダーシップ(壁を越えるリーダーシップ)
クロスボーダーリーダーシップとは、人と人との間にある「壁」を越えて、互いの違いを尊重して行動できる場をつくるリーダーシップです。
多様性には矛盾が潜んでいます。
「少子高齢化が進んでいますので、外国人労働者を受け入れましょう。多様性は大事だし、共生社会は素晴らしい。」
反面では、「自分の近所に外国人が住むのはなんとなく怖い。治安が悪くなるのでは?」
これらのよそ者に対する恐怖感は、人間が本来持っている防衛本能からくるもので、多様性には矛盾がはらんでいるのです。
もちろんこれらは人種だけではなく、「世代の違い」「性別の違い」「部署の違い」「立場の違い」あらゆる違いに作用します。
それを超えるのがクロスボーダーリーダーシップです。
このクロスボーダーリーダーシップは壁を壊すという事ではありません。
壁を無くして「みんな同じで1つになる」ではなく、それぞれ違う人間で考え方や価値観も文化も当然違う事を理解し、その中でつながりを構築するのがクロスボーダーリーダーシップです。
個人が持つ壁は以下の3つに分類されます。
- 「文化・慣習」の壁
- 「行動様式」の壁
- 「前例」の壁
これらは良い壁にも悪い壁にもなりえます。
自分の持つ壁が正しいと思いこまずに、他者の壁にも目を向ける事がクロスボーダーリーダーシップを高める事に繋がります。
そして、ビジネスの現場に見られる、チームを断絶させる可能性のある壁が以下の4つになります。
- 「パワー」の壁
- 「男女」の壁
- 「世代・年齢」の壁
- 「ステレオタイプ」の壁
パワーの壁とはリーダーと部下の間にある壁の事です。
力が強すぎれば部下とのコミュニケーションは断絶され、低すぎれば「けじめ」がつかなくなります。
これらの4つの壁についても、違いを理解し共生を図る事でクロスボーダーリーダーシップを高める事に繋がります。
まとめ
今日は、目指すべき理想のリーダー像を教えてくれる「スタンフォード式 最高のリーダーシップ」をご紹介させて頂きました。
目指すべき「最高のリーダー」とは、弱さを認めつつも積極性を発揮し、自分もチームも変えられる「アサーティブリーダー」という形でした。
アサーティブリーダーとは、「アグレッシブ(積極的)」と「パッシブ(受動的)」の中間でバランスがとれているリーダーです。
その目指すべき最高のリーダーである「アサーティブリーダー」になる為の4つのリーダーシップは以下の4つです。
- オーセンティックリーダーシップ(本質的なリーダーシップ)
- サーバントリーダーシップ(支援するリーダーシップ)
- トランスフォーマティブリーダーシップ(変容するリーダーシップ)
- クロスボーダーリーダーシップ(壁を越えるリーダーシップ)
アサーティブリーダーを目指す為にも、まずは自分で自分自身のリーダーになる事から始めましょう。
そうして、自分自身へのリーダーシップが身に付けば、実際に人を導く立場でも成果を出せるアサーティブリーダーになる事ができます。
この本は、心理学的な観点からリーダーシップの研究を重ねられたものを、日本人向けに書かれていますので非常に読みやすい内容でした。
この記事を読んで興味をもって頂けたらなら本書を読んで、是非とも素敵なリーダーを目指して下さいね。
それではまた!
国家資格キャリアコンサルタント 渡邊 和真