貴方の判断は本当に正しい?【現状維持バイアス】の影響力

こちらの記事に興味を持って頂きありがとうございます。

キャリアコンサルタントの渡邊です。

今日は、「現状維持バイアス」についてお伝えしたいと思います。

この記事を書いているのが、2020年の11月5日で、数日前に大阪都構想の住民投票が行われました。

結果は、僅差で否決となったニュースはご存知の方も多いのではないでしょうか。

私は大阪市民ではありませんので投票権はありませんでしたが、大阪市の方にとってみればとても重要な選択であったと思います。

私なりの分析として、この結果になったのは「現状維持バイアス」が大きく関わっているのではないかと思います。

この記事に目を通して頂いている方も、人生において大きな決断を迫られる事があると思います。

そんな、人が決断する際に大きな作用をもつ「現状維持バイアス」についてお伝えしたいと思います。

現状維持バイアスとは?

現状維持バイアスとは、「変化に対して、現状を維持する選択をとってしまう事」です。

バイアスとは、偏り偏見の事です。

自分で考えて選択をしていると思っていても、人間の脳は、実は偏った選択を行ってしまう様にできているのです。

現状バイアスが働く例
  • 社内の習慣やルールを変える事ができない
  • 良くない相手だと思いつつも、恋人と別れられない
  • 辞めたいと思っていても、なかなか転職に踏み切れない

これらは、よく有る現状維持バイアスの例だと思います。

大阪都構想に見られた現状維持バイアス

先日行われた、大阪都構想の住民投票において、否決される結果に陥ったのも、この現状維持バイアスが大きく関わっていると思います。

吉村知事と松井市長が二人三脚で大阪府と大阪市をまとめ上げた事により、大阪維新の会の人気は十分、公明党も賛成派に回り、前評判では可決されると予想されている方も多かったですね。

私も個人的には、大阪全体の事を考えるとどちらかと言えば賛成派でした。

ですが、結果は僅差ではあるものの、否決されました。

選挙までの数日間、連日のようにメディアに松井市長が出て、発言されていましたが、内容は「二重行政が二度と起こらない様に仕組みを変える」この一点でした。

確かに、大阪維新の会が知事と市長になる前の大阪では、度々大阪府と大阪市が意見の食い違いにより、政治が前に進まない事があったのは事実。

長期的目線で、二度とそういった状態に起こらない為と、加えてスピード感のある行政を行う為に、仕組みから変えようとしたのは理解できます。

ですが、抽象的な表現も多く、大阪市に住む人々にとっての決定的なメリットが伝わってなかったように感じました。

多くの投票者の報道がされていましたが、意見として出ていたのは、「変えるメリットがわからないから現状維持でいいのかなと感じました。」や「決定的なメリットがわからない中、大阪市というものが無くなるのは、嫌だった。」この様なものでした。

この意見から見ると、反対した人達も、確実なデメリットを感じて反対にした訳ではないという事です。

つまり、人間は「メリットもデメリットも不明確=現状維持」という選択をするのです。

客観的に見れば、メリットもデメリットも不明確なら、変わっても変わらなくてもどちらでも良いはずではないでしょうか?

ところが、人は現状維持の選択を自然に採ってしまうのです。

反対派のイメージ戦略も現状維持バイアス

逆に、反対派の戦略は見事だったと思います。

「大阪市がなくなる日」と題されたイメージ戦略は、正に現状維持バイアスに働きかけるものでした。

確かに、都構想にかかる予算問題や、住民サービスの低下というものも訴えかけていましたが、きちんと大阪の財政を確認し、可決された場合の比較をした人等はほとんどいないでしょう。

人は、自分の家計もどんぶり勘定な人が多いので、政治の予算など、なんとなくでしか捉えていないんじゃないかと思います。

ですが、「慣れ親しんだ、大阪市がなくなるかもしれない」という損失感の方はシンプルに影響を及ぼしたのではないかと感じました。

現状維持バイアスはなぜ起こるのか?

人は損失を回避したい生き物【プロスペクト理論】

損失を回避したいという心理要素として、「プロスペクト理論」というものがあります。

プロスペクト理論とは、人は利益と損失が同じであっても、損失の方を大きく感じてしまうという考えです。

人は、利益に対する満足よりも、損失に対する不満を約2倍も大きく感じてしまうそうです。

これは実験結果です。

  1. 100%の確率で50万円もらえる
  2. 50%の確率で100万円もらえる

この二択を質問すると、1の「100%の確率で50万円もらえる」を選ぶ人が多いそうです。

  1. 100%の確率で50万円の負債を背負う
  2. 50%の確率で100万円の負債を背負う

この二択を質問すると、2の「50%の確率で100万円の負債を背負う」を選ぶ人が多いそうです。

上の質問では、50%の確率で「貰えない」という損失を回避して確実な利益を取り、下の質問では、リスクを取ってでも損失を回避する選択を取っているという結果が出ているのです。

皆さんも通販で、期間限定ポイントが失われるのを回避する為に、本当に必要じゃない買い物をしてしまった事とかありませんか?

人は、損失を回避しようとするのです。

よって、「変化によって、起こる可能性のある損失」を回避する為に現状維持バイアスが働くと言えます。

現状維持は危険を回避する生物としての本能

現代であれば、少々の選択が間違っていようと死に直結する事はありませんが、昔の人々は変化や行動を起こす事で命の危険に晒される事がありました。

確かに、命の危険にさらされる可能性があるのなら、少々の不満があっても現状維持しようと考えるのは不思議ではないですよね?

人間は生物として生き残る為に、本能が現状維持を選ぶようにできているのです。

現状維持バイアスとどう付き合うのか?

現状維持バイアスは、人間の脳の仕組みで、知らず知らずのうちに自分の選択に偏りを掛けてくる存在です。

どうすれば良いのでしょうか?

まずは、知る事だと思います。

知識は力なり

イングランドの哲学者 フランシス・ベーコン

知識のある人、ない人、関わらずに現状維持バイアスはかかります。

ですが、知っているなら「自分は今、現状維持バイアスが働いているかもしれない。」と疑う事ができます。

そうする事で、正確な判断を下す可能性を高める事ができるのではないでしょうか?

何かを選択する時には、是非この現状維持バイアスを思い出してみて下さい。

この記事が、あなたの選択に良い影響を及ぼす事ができれば幸いです。

それではまた!

国家資格キャリアコンサルタント 渡邊 和真

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