こちらの記事に興味を持って頂きありがとうございます。
キャリアコンサルタントの渡邊です。
今日は、嫌な上司や口うるさい親から受ける「ダブルバインド」について書きたいと思います。
私が面接対応や転職相談を受けていると、このダブルバインドに悩まされている人が非常に多いと感じています。
更に職場はもちろん、学校や家庭などのあらゆる場面で起きる身近な問題です。
今日はその対処方法についてもお伝えしたいと思います。
ダブルバインドとは?
ダブルバインドとは、「二重束縛」を意味します。
人から矛盾した2つのメッセージを受け取り、迷い悩んでしまう状態の事です。
アメリカの文化人類学・精神医学の研究者であるグレゴリー・ベイトソンが発見した概念です。
- 2人以上の人間の間で
- 繰り返し経験され
- 最初に否定的な命令=メッセージが出され
- 次にそれとは矛盾する第二の否定的な命令=メタメッセージが、異なる水準で出される
- そして第三の命令はその矛盾する事態から逃げ出してはならないというものであり
- ついにこのような矛盾した形世界が成立しているとして全体をみるようになる
という状態をいう。
なんだかちょっとわかりづらいかもしれませんので、例を挙げて説明します。
職場や家庭、学校などで日常的に行われているプロセスです。
職場でのダブルバインドの例
ダブルバインドは、同僚などの対等な立場よりも上司や部下のように上下関係で発生しやすいです。
上司「わからない事があったらいつでも聞いてね」
部下「今、○○で困っているのですがどうすれば良いでしょうか?」
上司「おいおい、ちゃんと調べたの?それくらい自分で考えろよ」
結果的に、部下が自分で考えて失敗してしまった。
上司「なんで、失敗する前に相談しないんだ!」
典型的なダブルバインドですね。
これでは、部下はどうしていいかわからず、どんどん消極的になってしまいます。
上司「自由に表現する事が大事なんだ。会議では自分の意見は積極的に発言しなさい」
その結果、部下が自分の考えを発言して空気が悪くなってしまった。
上司「私たちは組織である以上、調和は大事にしないといけない。空気を読んだ発言をして、和を乱さない様にしなさい」
こちらもどこかだ聞いた事がある様なダブルバインドですね。
これも部下がどうしてよいかわからなくなってしまい、不満を溜める要因になってしまいます。
家庭でのダブルバインド
家庭内でも様々なダブルバインドが起きます。
親子関係や夫婦関係のどちらにおいても発生します。
親「今日は、誕生日だから好きな物を注文して良いよ」
子供「じゃあ、カレーとハンバーグとピザ!!」
親「そんなに食べられないんだからどれか1つにしなさい!それに栄養あるものを食べなきゃダメだ、サラダも頼みなさい」
好きな物を頼んで良いと言いつつ、結果的に親の食べさせたい物を選んでしまっています。
それなら、最初から「好きな物を注文して良い」なんて言わなきゃいいのにと思ってしまいますね。
嫁「あなた浮気してるでしょ!正直に言ってくれたら怒らないから言いなさい!!」
旦那「すまない。実は○○で浮気してしまったんだ。反省してる」
嫁「なんでそんな事したの!信じられない!!」
「怒らないから正直に言え」と言われて正直に言ったら怒られるというダブルバインドです。
まぁ、この場合は旦那に非があるので仕方ありませんが、、、
この様に、ダブルバインドは身近な場面で起こりえる問題です。
特に、上司や部下、親と子の関係性の様に支配的な関係性がある場合は、精神に深刻な悪影響を及ぼす場合もあります。
ダブルバインドの悪影響
上司と部下の場合
上司と部下の関係性の場合、ダブルバインドが長期的に続くと、部下は混乱、委縮してしまいます。
積極性を失い、主体性が下がり、仕事のパフォーマンスが下がります。
「怒られない為にどうすれば良いか?」ばかり考えたり、恐怖心から情報を報告しない様になる事もあります。
長期化すれば、「すべて自分が悪いから」と考え込んでしまい、メンタルヘルスを損なって、精神疾患に繋がる可能性もあります。
親子の場合
親子関係でダブルバインドの環境下にいた子供は、自己肯定感が育たなくなります。
自己肯定感についてはこちらの記事で詳しく説明しています。
自己肯定感が育たないばかりか、「何をしても怒られる」⇒「自分が悪い」⇒「自分はダメな子供なんだ」という自己否定にまで繋がります。
そうすると、過度に周囲の大人の顔色を伺いながら過ごす子供になってしまうかもしれません。
ダブルバインドの対処法
身近な場面で起きる上に、場合によっては非常に深刻なダメージを受けるダブルバインドなので、少しでも被害を減らす為に対処法は考えておきたいものです。
対処法1 話し合う
真っ直ぐな正攻法で、相手の話がダブルバインドである事を伝えます。
ダブルバインドは、感情に任せて、無意識で言ってしまっている事がほとんどです。
自分がダブルバインドを言っていると気づく事で意識できる様になるかもしれません。
更にダブルバインドが良く起きる深刻なトラブルである事を相手に知らせる事ができると抑止力になります。
もちろん、話が通じない、そもそも真っ向から言うのがムリ、という場合もありますので、その場合は他の対処法を選ぶか、第三者を通じて間接的に伝えるのも良いかもしれません。
対処法2 本質的な課題を取り除く
ダブルバインドは、2つの矛盾しているメッセージなのですが、相手の伝えたい事の本質は1つの場合があります。
先述の「職場のダブルバインド1」の場合は、「与えられた職務を上司である私に迷惑をかけないようにこなしてほしい」という事が本質です。
「親子のダブルバインド」の場合は、「バランスの良い食事を選んで食べて欲しい」というのが本質です。
相手の本質的に伝えたいメッセージを受け取り、それに対処ができるなら対応する事で矛盾を抱えたダブルバインドが発生しなくなります。
対処法3 無視する
無視するといっても、本当に無視すると相手がよけいに怒ってしまうので、心の中で無視しましょう。
先述の通り、相手は感情に流されている人物です。
自分で矛盾した発言をしている事に気付いていない人物です。
貴方を傷つけている事に気付いていない人物です。
そんな人に、付き合う必要はありません。適当に流せるなら流しましょう。
なんなら、「そんな事にも気づかない奴なのか、、、」と憐れんでやりましょう。
ちょっと心が休まるかもしれません。
対処法4 相談する
ダブルバインドの状態になると、混乱してしまい、正常な判断ができなくなる事があります。
客観的な意見をくれる人に相談しましょう。
軽い場合は友人や家族でも問題ありませんが、深刻なダブルバインドが起きた場合に相談できる第三者機関は調べておいた方が良いと思います。
労働者向けの相談窓口がある会社もありますし、労働組合が信頼できそうなら相談するのも良いでしょうし、我々のようなキャリアコンサルタントに相談してみると違った切り口でアドバイスができるかもしれません。
対処法5 逃げる
逃げるってカッコ悪い印象かもしれませんし、相手が悪いのにこっちが逃げるなんて納得できないかもしれません。
ですが、「対処法1 話し合う」の様に他者に干渉するのは大変です。
そして、自分が正当であったとしても相手が変わってくれるかはわかりません。
「対処法2 本質的な課題を取り除く」のも現実的な場合と時間がかかる場合もあります。
「対処法3 無視する」では、ストレスが溜まって我慢できない人もいると思います。
「対処法4 相談する」信頼できる第三者の相談窓口がわからない事もあるでしょう。
それなら、逃げましょう。
「異動願い」や「退職願」を出しましょう。
精神に深刻なダメージを負うよりマシです。
最後に自分を守れるのは自分ですから、手遅れになる前に「逃げる」という選択肢はもっておきましょう。
まとめ
今日は、ダブルバインドとその対処法について書かせて頂きました。
ダブルバインドとは、2つの矛盾したメッセージにより、迷い混乱してしまう状態の事です。
職場、家庭、学校など、日常的に起こりうるもので、パフォーマンスの低下、消極的になる、自己肯定感が下がる、長期化すれば精神疾患に発展する場合もあります。
- 話し合う
- 本質的な課題を取り除く
- 無視する
- 相談する
- 逃げる
改めて身近な場面で起きる事であり、自分も知らず知らずのうちに加害者になっているかもしれないと思いました。
きちんと意識して防いでいきたいものですね。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
この記事が、あなたのキャリアにプラスになれば幸いです。
それではまた!
国家資格キャリアコンサルタント 渡邊 和真