こちらの記事に興味を持って頂きありがとうございます。
キャリアコンサルタントの渡邊です。
「学びや教養は、キャリアの武器になる」という考えから様々な事柄の知識をご紹介しています。
今日は、自殺や自傷について考えたいと思います。
先日も大阪梅田で飛び降り自殺がありました。
飛び降りた方だけでなく、通行人まで巻き込まれるという痛ましい事件でした。
芸能界でも立て続けに自殺のニュースが流れました。
いつ、自分の周囲で自身を傷つけようとする人が現れないとも限りません。
そんな時、少しでも役に立つ知識を書いておこうと思います。
自殺や自傷の現実
まずは、自殺の現状をデータで見てみます。
今回の参考データは、「厚生労働省自殺対策推進室」作成のデータを使用させて頂きました。
いじめや家庭環境、仕事でのストレスでの自殺がニュースで取り沙汰され、社会問題になっている事から自殺者は増加傾向にあると考えがちかもしれませんが、自殺者数は10年連続の減少となっています。
「自殺者数のデータだけ?割合は?」と聞かれる方もおられるかもしれませんが、自殺死亡率も10年連続で減少しています。
※「自殺死亡率」とは人口10万人当たりの自殺者数を言います。
自殺者が減っている要因は、自殺原因によって違い、「医療の進歩」や「社会経済の安定」等の要因がありますが、多くの自殺原因に関わるものとしては、相談窓口が効果的に働いているようです。
やはり、自殺を止める要因としては、相談できる相手がいるという事が大きいのではないでしょうか?
国際的な自殺者の割合は?
ちなみに世界的な規模で見ると、日本の自殺率はまだまだ高いと言えます。
世界保健機関による粗自殺率(統計の信頼性や更新頻度が国によって異なるため、単純な比較が難しい)によると、2016年時点での日本の自殺率は18.5%でした。
他国との比較データは下記となります。
日本:18.5%
ロシア:31.0%
韓国:26.9%
フランス:17.7%
インド:16.3%
アメリカ:15.3%
ドイツ:13.6%
南アフリカ:11.6%
中国:9.7%
イギリス:8.9%
イタリア8.2%
トルコ:7.3%
ブラジル6.5%
インドネシア:3.4%
世界平均:10.6%
世界平均が、10.6%。
旧、現社会主義国や韓国、日本が高いとされ、自殺が禁止されているイスラム圏の国が低いとされています。
自殺は、日本の国の問題として捉えられるかもしれません。
ほとんどの年齢層で自殺死亡率は減少していますが、10~19歳の死亡率のみ増加しています。
若年層に向けた自殺率減少は、今後の課題になりそうです。
アンケート調査によると、およそ4人に1人が自殺を考えた事があるとされ、中高生を対象とした調査では、10人に1人が自傷の経験があるそうです。
もちろん、自傷=自殺に直結する訳ではありませんが、自傷を経験した人は、10年以内に自殺するリスクがそうでない人の数百倍になるという研究もありました。
自殺の原因・背景
自殺の原因・背景は様々です。
問題は1つではない事も多く、「家庭が上手くいっていない上に学校でも人間関係が上手くいかない。」や「経済的に苦しい中で重大な健康問題が発覚した。」などの複数の原因を有する事もあります。
自殺者の原因・背景に関しては警察庁のデータを参考にさせて頂きました。
1位・・・健康問題 うつ病や双極性障害、身体的な病気も双方含みます
2位・・・経済・生活問題 生活苦、負債(多重債務)、事業不振などが挙げられます
3位・・・家庭問題 夫婦関係や親子関係の不仲、家族の死亡などが要因となります
自傷の始まりは、生きていたいから
自傷も自殺と同じ要因と考えられがちですが、実は生きていたいからこそ辛い気持ちを切り離したいという行為のようです。
イライラを抑えるため:48.5%
自分の辛さを理解してほしい:18.2%
死にたくて:18.2%
辛い気持ちをすっきりさせたい:9.1%
その他:6.0%
リストカットに代表される自傷は、体を傷つけるという身体的な痛みを伴う行為です。
それを行うのは、死にたいほど辛い、イライラする気持ちを、身体的な痛みによって上書きしようとしているのです。
実際に自傷行為を行う方に話を聞くと、自傷をすると「すっきりする」とか「ホッとする」という意見が出るそうです。
本来、人間がストレスを溜めた時の対処法は様々です。
「会話」「趣味」「服薬」「飲酒」「自傷」その中の1つを選んでいるに過ぎません。
では、何故、あえて「自傷」という選択をとるのでしょうか?
自傷を選ぶ理由
自傷という対処法を選ぶ理由は3つです。
- ひとりでできるから
- 即効性があるから
- 脳内麻薬依存性があるから
やはり、辛く苦しい時にひとりで対処でき、痛みという即効性がある手段を選んでしまうようです。
そして、自傷を繰り返す人はエンケファリンという脳内麻薬の血中濃度が高い傾向があるようです。
独りで過ごしていると脳内麻薬の分泌量が減り、不安や緊張が高まる為に自傷の行為に走ってしまうという事です。
こういった状態がエスカレートすることで、死に直結する様な自傷行為、自殺行為に及んだり、死ぬつもりがない自傷行為で死んでしまったり、という事が起こってしまうのです。
私たちができる事
そうした、悩んでいる人に私たちができる事は、声を聴き、サポートできる人に繋いでいく事です。
まず、声を掛ける
まずは、声を掛けてみましょう。
でも、話してくれなくても無理に聞き出そうとはしないでください。
「私は、貴方の話を聴きたい」という姿勢を伝える事が重要です。
大事なのは傾聴の姿勢
話してくれた時は、聞き役に徹しましょう。
人はつい解決策を提案しようとしてしまいます。
解決策の提示よりも、相手の話したい事を話させてあげる事の方が重要です。
話を聴く事の重要性、傾聴についてはこちらの記事でも書いておりますので参考にして下さい。
支える人を増やす
そして、支える人を増やしましょう。
自分ひとりで背負うのは危険です。
場合により、共感力が強いと自分自身も精神的に辛くなることがあります。
他にも、解決しようとする責任感から「どうにかしよう」とし過ぎて相手のプレッシャーになる逆効果が生まれる場合もあります。
自分以外に相談できる、信頼できる人を増やしていきましょう。
相手の家族や友人で対処できる事もありますが、プロの支援者がいる第三者機関に相談する事も考えましょう。
【自殺総合対策推進センター】
自殺対策を専門に扱う研究機関で民間を含めたネットワークを持つ、厚生労働大臣指定法人です。
https://jssc.ncnp.go.jp/index.php
【地域の保険センター・保健所】
地域住民の健康に関する相談ができる場所で、精神的な相談も可能です。
【精神保健福祉センター】
心の問題を専門に扱う公的機関で各都道府県に1か所以上設置されています。
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/support/mhcenter.html
【子ども家庭支援センター・児童相談センター】
子育て全般についての相談ができる公的機関です。
【一般社団法人 日本いのちの電話連盟】
自殺予防のための電話相談を行っている一般社団法人で、メール相談も行われています。
大ごとにしたくない気持ちは理解できますが、手遅れになる前に相談する選択肢は考えてみましょう。
まとめ
今日は、自殺や自傷行為について書かせて頂きました。
非常に繊細な内容ですし、考えるのも気分が良い事ではないかもしれません。
ですが、周囲に悩みを抱えた人が現れた際にはちょっとだけでもその人の力になる事ができるかもしれないと感じました。
まずは、何より相手の思いを吐き出させてあげること。
これは、私でも少しならできる事だと思います。
この記事が誰かのお役に立てれば幸いです。
それではまた!
国家資格キャリアコンサルタント 渡邊 和真