プロサッカープレイヤー 高寺 元気

100人インタビュー8人目は高寺 元気さん。

オーストラリアでプロのサッカー選手としてプレーされています。

プレイヤーとして欧州のクラブでプレーする事を目指す一方で、自分の大好きなサッカーを通して子供達を幸せにする活動も行われています。

「昔はサッカーの事しか考えずに視野が狭い状態でした。」と語ってくれました。

視野を広げるきっかけはどんな事だったのか?

彼のキーワード「チャレンジ」へのこだわりは?

海外でプレーし続けている選手から見るサッカー感は?

魅力的なお話が盛りだくさんでした。

今日は、余す事なくお伝えしていきたいと思います。

サッカーをする環境について

「balmain tigers fc」というオーストラリアのシドニーにあるチームでプレーしています。
シーズンオフで戻ってこられたんですか?
シーズンオフをオーストラリアで過ごす事もできたんですけど、移籍を含めて検討したかったので一度日本に帰ってきました。
移籍を検討されているんですね。
オーストラリアの環境は決して悪くないんですが、北欧でプレーしたいと思っているので移籍を検討しています。
今の年齢が23歳なんですけど、選手としてのピークが20代後半だと考えたらあまり時間が無いのでどんどん挑戦していかないといけないなと思っています。

チームを選ぶ基準

国によって色が違うんですけど、1番は「自由を尊重してくれる」これを重要視しています。
日本のチームとかはどうなんですか?
日本のチームにも所属した事があるんですけど、肌に合わなかったですね。
どんなところが合わなかったのですか?
1番は、監督やコーチとの上下関係の考え方ですね。

日本だと監督が戦術プランを考えてそれを選手が実行する。
きちんと監督の指示通りのプレーが出来るかが評価基準になります。

海外だと国にも寄りますが、基本的にプレーするのは選手なのだから、選手自身が考えてプレーをする事が大事になります。

監督をリスペクトはしていますが、監督の指示が絶対ではなく、自分の考えで動く選手ばかりですよ。
そんなに違うものなんですね。
昔、名古屋グランパスの監督に就任したベンゲル監督も日本との違いに驚いていました。

「彼らは私に具体的な指示を求めていた。

しかし、試合を担当するのはボールを持っている選手たちだ。

だから私は彼らに自分自身で考えることを教えなければならなかった。」

元名古屋グランパスエイト監督 アーセン・ベンゲル

主体性が大きく違うんですね。

サッカーだけの話では無いような気がします。
会社員でも日本の企業に勤めている人は、良くも悪くも上司の方を向いて仕事をしている人が多いですよね。
チームがプラン通り一体感を持って戦う事が日本の良さと言われています。

僕は、そういった価値観が日本のサッカーが1つ上のレベルに上がれない理由なんじゃないかと思っています。
価値観の違いから海外のプレーにこだわられているという事ですね。

どの国が1番合っているのですか?
南米のサッカースタイルは合っていると思います。

雑なところがあるのでビジネスを一緒にするのに抵抗はありますけど(笑)

実際にチリでプレーしていた経験があるんですが、楽しかったですね。
チリでのプレー経験が有るんですね。
では、次にその頃のお話を伺えますか?

南米チリでのプレー経験

いつ頃のお話なのですか?
高校生、17歳の時です。
日本の通信制の学校で勉強しながらチリでプレーしました。
高校生の頃なんですか!?
凄い挑戦ですね!

南米に行こうと思ったきっかけはなんですか?
南米のサッカーが魅力的だったからですね。
個人技を大事にするサッカーが魅力的に感じていました。
その頃、仲良くさせて頂いていた先輩のサッカー選手が南米のパラグアイでプレーしていまして、その関係で南米に行くことにしました。
何故パラグアイじゃなくてチリなのですか?
チリの方が自分に合っているチームがあったからですね。
実際に行ってみて感じた違いはどんな事ですか?
1番感じたのは間口の広さですね。

日本ではサッカーでもプロになる道は限られてますが、南米だと上手ければどんな場でプレーをしていても目に留まる可能性がありました。
日本だと、ユース(プロの育成組織)に所属するのがほとんどで、後は高校サッカー選手権や大学サッカーでよっぽど活躍するくらいでしょうか?
そうなんですよ。
日本ならユースに所属していなければ見向きもされないところがありますが、チリだとそんな固定概念が無いので「上手かったらなんでもOK」というシンプルな環境が魅力的でした。
価値観の違いですね。
価値観でいうと、チリ以外の国の選手もたくさんいましたので、考え方や価値観の多様化に触れれたのは新鮮でしたね。
17歳にして素晴らしい経験ですね。
どの位チリでプレーされたんですか?
2年位ですね。
監督等も変わり、練習参加もできなくなってしまって、、、
そんな時、南米行きのきっかけをくれた先輩が日本の「鹿児島ユナイテッド」をいうJFLのチームに移籍し、練習参加に誘ってもらった事から日本に戻って来ました。
日本に戻って来て感じる事はありましたか?
肌に合わないなと、改めて痛感しました。

自由がなく、監督とも合わず、上手くいかなかったですね。
海外で過ごして来ただけに上下関係などにも堅苦しさを感じました。
その後はどうされるのですか?
実はその後ヘルニアを患い、暫くサッカーができない状態が続きました。

もう一度海外挑戦する為に、1年位のリハビリを乗り越えて再びチリのトライアウトに参加しました。
結果はどうなったんですか?
チームと契約する話が進んでいたのですが、実は経営状態が悪くて話が頓挫しました。
もう一度挑戦する為にわざわざ海を渡り、チームも決まったと思ったのにほとんど活動できずだったという事ですか。

それは辛いですね。
正直、ショックでしたね。

ただ、その後の出会いで大きな転機を迎えました。
どの様な出会いですか?
怪我のリハビリ中に、大阪の1部に所属するチームに練習参加させてもらっていました。
そのチームのオーナーがアスリート支援を行う会社を経営していたんです。

ご縁があり、所属チームが決まるまでの間お世話になる事にしました。

そこでメンターになって頂いた方との出会いが自分にとって価値観を変える転機になったと思います。
では、次はその話を聞かせて頂けますか?

人との出会いが視野を広げる

それまでの自分はサッカー一筋で生きて来たこともあり、すごく視野が狭かったと思います。
何がそれを変えたんですか?
人との出会いが変えてくれました。

メンターの方に視野の狭さを指摘されて「もっと色んな人の話を聞きなさい」と言われました。
そして、知り合いを沢山紹介してもらいました。

それまで自分の周囲にはサッカー関係者ばかりで、この時初めて色々な業界の方と交流を持たせて頂きました。

「世の中にはこんなに面白い人達がいるんだ。」って気付かされましたね。

そこでサッカー以外の楽しみも覚えましたし、価値観が一気に広がりました。

いい出会いでしたね。
人との出会いで世界が一気に広がったんですね。
その後、その会社でイベントの主催なども任せて頂き、サッカー選手ではできない経験をさせてもらいました。
どの様なイベントなのですか?
フットサルイベントです。

元々社会貢献に興味があり、アルバイトでヘルパーの仕事もしていました。

それをメンターの方と相談していく内に自分の得意なサッカーを活かした社会貢献の方法を探っていこうという話になりました。
1回目は、その頃出会った人達への恩返しを含めたサッカーの素晴らしさを知ってもらう為のフットサルイベントでした。
イベントの主催などの経験は無かったですよね?
そうですね。苦労しました。

どうやって人を呼んだら良いかも分からないし、サッカーを知らない人達に楽しんでもらうにはどんなイベントにすれば良いかを考えるのも初めてでした。
めっちゃいい良い経験ですね。

フットサルイベントって経験者なら声掛けやすいですけど、そうじゃない人を集めるって大変そうですけど、どうやって人を集めたのですか?
「初めてイベントするんで是非来てください!」って直接ストレートにお願いをするというものでした(笑)
情熱をストレートに伝えるという技ですね!
高寺さんがそれまでの人間関係づくりをきちんとしていたからこそできた技ですよね。

実際にイベントを行ってみてどうでした?
当日はあいにくの雨だったんですけど参加者の皆さんが本当に喜んでくれて、人に喜んでもらうとか楽しんでもらう事の素晴らしさをこの時知りました。
それは最高ですね!
初心者の方々に楽しんでもらう為に行った事とかはありますか?
ミスを責めない。
チャレンジした事を誉める事だと思います。

これも、日本でプレーした時と海外でプレーした時の差から学んだ事です。
日本だとシュートを外したら勿体ないと揶揄される事が多いんです。
それで、積極性が失われている気がします。

海外だとシュートにいった事を誉めてくれます。
自信を持ってプレーさせてくれますね。
大きな違いですね。

ミスを責めて良いところを認めれないのはサッカーだけではなく日本社会全体の問題かもしれませんね。
それが国のサッカーの魅力の違いに繋がっている気がします。

この会社に所属している間も日本のチームのトライアウトに参加したんですけど、僕はどうしてもその辺りの考え方が合わなかったですね。
海外との違いって他にもありそうですね。
もう少しその辺りを聞かせて頂けますか?

海外と日本のサッカーの違い

日本はエリート意識が強いかもしれないですね。

日本のプロは、先程話した通りユース出身者が圧倒的に多くてそれ以外の存在を認めない様な風習が残っている気がします。
優秀な人間が残っていく構図は同じはずなのにどこで違いが生まれるんでしょうか?
1つにスカウトの質量が全然違うと思います。

海外でプレーしていると県や市のリーグやそれこそ公園でプレーしている選手にスカウトから声が掛かる事さえあります。

チャンスがそこら中に転がっているんですよ。
だから一部のエリートだけがプロにいる様な構図にならず、選手の中にも色んな出身者が居て普通だという価値観に繋がっているという事ですね。
エリート街道に乗らなくても、一度ドロップアウトする様な事があってもチャンスはあるというのは大きいですよね。
そうですね。
おおらかさにも繋がっている気がします。
他にも違いを感じる事はありますか?
主体性ですかね?
プレーだけじゃなく、ミーティングの発言とかでも違いが出ます。

日本だとキャプテンとか一部の人間しか発言しない事が多いですよね?

海外だと、自己主張しない奴はダメって文化なので「お前が言うな」って思う選手がガンガン自己主張してきますよ。
違うものなんですね。
よく言われるフィジカルの違いとかはどうですか?
フィジカルは意外と差はないんじゃないかと思います。

海外だと線が細い選手やだらしない体の選手も多いのに活躍したりします。
むしろ日本人の方がきちんと体を作っている選手が多いですよ。
言われてみると海外選手って凄い体の人もいるけど細い人も多いですよね。

FWが育たないなんて事も言われていますけど、実はフィジカルよりメンタルの問題が大きいんですかね?
練習から姿勢が違う気がします。
海外選手は練習からシュートをガンガン打って外しまくっているんです(笑)

その為、本番でも思い切りが良い。

積極性や主体性の差じゃないかと思います。
なんか勿体ないですね。
価値観の多様化にしても失敗を恐れる文化にしても、サッカー界だけの問題ではない様な気がしますね。
そんな中、高寺さんは失敗を恐れない「挑戦」というのを大事にされていますよね?

次は挑戦についてお話を伺えますか?

挑戦する姿勢

挑戦する姿勢は凄く大事にしています。
まだまだ足りていない、もっと挑戦しないとなと思っています。
失敗を恐れる気持ちはないんですか?
最初はあったと思います。

でも、色んなチームのトライアウトに参加したり、チームに営業をかけているとボロクソに言われたり、相手にしてもらえない事がほとんどなんです。

繰り返している内に抵抗は無くなりました。
失敗を繰り返せば失敗への恐れが無くなるという事ですね。

周囲の声も気になったりしないですか?
気にならないです。

挑戦をしようとしている人を応援できない人って、自分が挑戦していない人だと思います。

自分が挑戦している人って絶対人の挑戦を笑ったりしないですよね。
確かにその通りですね。
その挑戦を体現する為に「シュートチャレンジ」という企画を行っています。

シュートを打った本数分のボールをオーストラリアの養護施設に寄付させてもらっています。
ゴールを決めた数じゃなくてシュートの本数なんですね?
僕は「チャレンジ」がコンセプトなので、ゴールを決める事ではなく、一歩手前のシュートを打つという姿勢を大事にしています。
なるほど「チャレンジ」ですね。

では、今後チャレンジしていきたい事を教えて下さい。

今後のチャレンジ

まずはプレイヤーとして北欧のクラブでプレーしたいと思っています。
何故北欧なんですか?
デンマークとかノルウェーの子供たちはプレーに対して指示されないという教育方針でサッカーをしています。
あとは、楽しんでるかどうかの確認だけされます。

そんな環境で育っているので、純粋にサッカーを自由に楽しんでるんです。
そんな場所でサッカーをしたいと思っています。
素敵な環境ですね。
後は「チャレンジ」する事や「自由に楽しむ」事の大切さを子供たちにサッカーを通して伝えていく活動をしていきたいですね。
引退後とかの話ですか?
いえ、現役の内からやるべきだと思っています。

プロスポーツ選手の「セカンドキャリア」みたいな形で良く言われていますけど、一生を通して「キャリア」なので現役の頃からやるべきだと思っています。
なるほど。
高寺さんの経験した事だからこそ伝えられる事がありそうですね。

インタビューを終えて

僕がサッカーが好きな事もあり、プロで生きている方のサッカー感が聞けて楽しかったです。

キャリアという視点でも、海外と日本の違いはサッカー界だけの違いではないと思いましたし、一般のキャリアの話にも通ずる事が多かったですね。

海外でプレーしたからこそわかる高寺さんの感じている日本の課題が、教育や環境の問題だという事を再認識させて頂きました。

サッカーという視点から物事を考えた事が無かったので貴重な体験でしたね。

是非、今後もチャレンジする事、失敗する事の大切さを高寺さんの経験を踏まえて伝えていってほしいです。



それでは、また!

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