こんにちは、キャリアコンサルタントの渡邊です。
一見無関係にも思える様々な学びの全てがキャリア形成に関わると信じおり、自身の学んだ事を要約して発信しております。
今日は少しセンシティブな内容に取り組んでみたいと思います。
香港情勢についてです。
連日のコロナニュースが飛び交う中で、7月には「国家安全維持法」が施工され、逮捕者が出たという報道がされました。
そして、数日前には香港の民主活動家の周庭さんや民主派のメディアであるリンゴ日報の創業者である黎智英さんが逮捕されたというニュースは記憶に新しい事だと思います。
これらはセンセーショナルな形で報道されていましたが、私は中国や香港史に対しての知識が浅かった為に何が起きているのかをきちんと理解する事ができませんでした。
せっかくなのでこの機会に最低限の知識を学ぶことにしました。
これらの事について興味はあるけど中々学ぶ機会に恵まれなかった方もおられるのではないでしょうか?
「香港って中国だよね?何が違うの?」
「国家安全維持法ってなんか難しそう」
「一国二制度ってよく耳にするけど何のこと?」
これらに興味を持ち、疑問に思いつつ日々を過ごしていた方に今日は少しでも簡単にお伝えし、深く学び、考えるきっかけになればと思い、私の学んだ事をお伝えします。
香港の歴史
「香港って中国という国の一部だよね?」
「一国二制度って何?」
この質問に答えるには、まずは香港の歴史について少し知らなければなりません。
できるだけ簡単にお伝えする為に情報を少なめにお伝えします。
すべては清(のちの中国)の領土であった香港という地域がイギリスの植民地となる事から始まります。
まずは1842年のアヘン戦争後、南京条約で「香港島」がイギリスの植民地となりました。
次に1860年のアロー戦争後に締結された北京条約で「九龍半島の南部」もイギリスに割譲されました。
そして1898年、日清戦争後の中国分割で「九龍島北部(新界)」もイギリスに99年間租借される事になりました。
これらのイギリスの植民地にされた香港島と九龍半島全域を合わせた地域を通称「香港」と呼びます。
アヘン戦争:アヘンの密貿易停止により行われたイギリスと清の戦争。
アロー戦争:アヘン密輸船のアロー号を取り締まった清と自由貿易への不満を募らせていたイギリスの、アロー号を口実として引き起こされた戦争。
日清戦争:朝鮮半島の主権を巡って行われた日本と清の戦争。
中国分割:日清戦争での敗北により、弱体化をさらす事になった清の国土を帝国主義諸国が分割支配する事になっていった。
租借:土地の貸し借りの事。この場合はイギリスが武力的な威圧を行い、半強制的に借りたという側面が強い。
そして、イギリスの統治下で香港は大きく経済発展を遂げる事になります。
時は経ち、1898年の九龍島北部の租借から99年後の1997年に香港は中国に返還されました。
中国としては無事に領土が戻り良かったのですが、香港に住む人達にとっては懸念もありました。
共産党の下で一党独裁政権の中国では経済の自由や言論の自由は保障されません。
イギリスの統治の下、資本主義で大きく経済や文化が発展した香港からすると中国の大きな規制の下で不自由な思いをしたくありませんでした。
その解決策として出されたのが【一国二制度】です。
一国二制度とは?
香港は「中華人民共和国香港特別行政区」の通称です。
特別行政区というのは、中国国内で軍事と外交以外の一定の自治を認められている地域です。
中国という一国の中で「社会主義」の本土と「資本主義」の香港の二制度を取る事が許されている特別な地域というのが香港なのです。
これにより、中国という社会主義の国内で、経済や言論の自由な香港という特別な地域が誕生する事になります。
実際に香港はアジアを代表する世界都市のひとつとなりました。
アジアの金融、交通、教育、メディアの中心的な役割を持つまでに成長します。
とはいえ、中国としては、国内を共産党の国家としてひとつにまとめたいわけですから、徐々に香港に対して中国の影響力が強まる政策を打ち出していきます。
そして、中国という国の中で民主化を目指す香港と中国共産党で一つの国としてまとめたい中国本土としての構図が続くようになります。
香港の民主化闘争
雨傘運動
一国二制度により、経済や言論の自由は保障されていた香港でしたが、選挙に関しての自由はありませんでした。
とはいえ、自治を認められている香港では、2017年からは普通選挙が実行される予定でした。
しかし2014年、香港特別行政区長官の選挙において、実質的に中国共産党に批判的な人物は立候補できないという問題が浮き彫りになり、普通選挙を求めてデモが起こります。
香港当局はデモ隊との対話を拒否、放水を行い解散させようとしましたが、デモ隊は雨傘を広げて抵抗を続けました。
結果、デモ隊の要求は全て拒否され、3ヶ月近く続いたデモは強制排除される事になりました。
逃亡犯条令改正案反対運動
2019年に「逃亡犯条令改定案」の審議が始まると、反対運動が起こりました。
逃亡犯条令の改定は、元々は台湾での殺人事件の容疑者が香港で逮捕された事が、香港と台湾の間で犯罪人の引渡しに関する法が定められていなかった事から改定案が出されました。
ですが、改定案が成立した場合、香港と中国本土の犯罪人の引渡しが可能になる為、中国共産党に批判的な活動をしている香港市民が中国当局の取り締まり対象になる可能性を危惧し反対運動が起こりました。
一連のデモのうち6月16日のデモでは、主催者発表では最大約200万人(警察発表では33.8万人)で香港市民の4人に1人が参加しているという大規模なものになり、海外9ヶ国19都市でもデモが実施されました。
結果、政府は法改正を撤回しましたが、この件をきっかけとして長期的な「香港の民主化デモ」に発展し、新型コロナウイルスの流行で実質的なデモ活動を行う事ができなくなるまで継続的にデモが行われていました。
コロナウイルスの流行で大規模なデモ活動はできなくなりましたが、現在でも形を変えて抗議活動は行われています。
香港国家安全維持法の可決
そもそも、香港特別行政区での法律では基本的に以下の構造をもっていました。
- 基本法の解釈権は全人代(全国人民代表大会という国家の最高権力機関)にある。
- 基本法の改正権は全人代にある。
- 香港の自治に国防や外交などの国家行為は含まれない。
国家としては当然と言えば当然かもしれません。
ですが、、、
そして、政府に対する抗議活動やテロ行為が国家安全に関わる「国防や外交などの国家行為」と解釈し、改正される事になったのが「香港国家安全維持法」となります。
内容は、国家安全の維持とテロ活動の防止について国策を強化する為に、「学校、社会団体、メディア、インターネット等」を指導や監視、管理の対象とされます。
そして、国家安全維持法によって2つの組織が作られます。
- 国家安全維持委員会
- 国家安全維持公署
「国家安全維持委員会」によって、先述の国家安全に関わる行為の情報収集や調査が行われ、「国家安全維持公署」が実際に取り締まる実働部隊の役目を果たします。
当然ながら、「国家安全維持委員会」には中国政府から顧問が派遣されて管理される立場の組織で、国家安全維持公署の人員は中国政府より派遣される上に、中国共産党が指導する人民解放軍と連携する組織となります。
国家安全維持法施行後の香港
2020年6月30日に施行され、翌日には「国家安全維持法」に違反したとして男女10人を逮捕し、この他に禁止されていた集会に参加したとして約360人が拘束されました。
香港衆志などの民主活動団体や政党も活動停止や解散に追い込まれ、書店に並んでいた中国共産党を疑問視する様な書籍も姿を消したそうです。
香港市民の中には移民を検討する人が急増し、企業も香港から撤退の動きが強まりました。
更にGoogle、Facebook、TwitterなどのIT企業は、香港政府へのユーザーデータ提供停止を相次いで発表しました。
そして、冒頭にお伝えした民主活動家の周庭さんやリンゴ日報の創業者である黎智英さんの逮捕も「国家安全維持法違反」の疑いによるものです。
諸外国の反応
元々香港を統治していたイギリスが大きな動きを見せます。
1997年の香港返還までに生まれた香港市民に対して、イギリスへの移住や市民権の申請をできるように改定すると発表しました。
これにより、イギリスに移住する香港市民が増えるとみられています。
アメリカでは、香港に認めている優遇措置を見直す手続きへ着手。
国家安全維持法の施行に関与する人物11名を「米国内の資産凍結、米国人との取引禁止」の制裁対象としました。
カナダやオーストラリアでは、犯罪人の引渡し条約を停止。
オーストラリアに滞在する香港市民について、ビザの5年間延長、永住権の申請ができるようにする方針です。
台湾(中華民国)では、香港の「一国二制度の終わり」とし、台湾を統一したいと考えている中国に対して警戒を強めています。
国連人権理事会で、国家安全維持法の審議が行われました。
国家安全維持法に反対の国は27ヶ国で、日本も反対の立場で欧米諸国が中心です。(アメリカは同理事会から脱退)
ですが、賛成国はその2倍、52ヶ国に及びます。
これには、中国と同じように独裁的な体制を維持するために市民への統制を強める考えが当然と考える国々や莫大な資金援助を受けており、政治的なプレッシャーから中国支援に回る国々が多いという事です。
ですが、個人的には予定通り、タイミングを見極めながら粛々と進めているといった印象を受けました。
まとめ
さて、今日は初心者向けの香港情勢を書かせて頂きました。
自分でも学ぶ事を後回しにしてきたので良い機会になりました。
元々香港はイギリスの統治下にあった為、社会主義の中国の中に資本主義の香港という地域が生まれました。
現在の香港は、国を一つにまとめ上げて最強の国家を作ろうとしている中国に、自由を守ろうとしている香港が追い詰められている状況です。
それが国際的にも影響が及び、現在の世界の国々の立ち位置が表面化されているようにも感じます。
価値観や立場によってそれぞれの意見はあるかと思いますが、まずは知る事で興味を持つ事やそれについて考える事が重要ではないかと思い、記事を書かせて頂きました。
今回、記事を書くにあたり参考にさせて頂いたものの中から為になったと感じた記事のリンクを張らせて頂きます。
興味があれば是非ともご覧ください。
香港国安法を「合法化」するための基本法のからくり
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/07/post-93995.php
香港・国家安全維持法、条文で読む深刻事態
https://toyokeizai.net/articles/-/361267
習近平の大誤算…いよいよ香港から「人」も「カネ」も大脱出が始まった!
ここまでお読みいただきありがとうございました。
貴方のキャリアに良い学びを伝えられたらうれしいです。
それではまた!
国家資格キャリアコンサルタント 渡邊 和真