こんにちは、キャリアコンサルタントの渡邊です。
天才とは、1%のひらめきと99%の努力である
発明王トーマス・エジソン
努力は必ず報われる。
もし報われない努力があるのならば、それはまだ努力と呼べない。
世界のホームラン王 王貞治
努力した者が全て報われるとは限らん。
しかし、、、
成功した者は皆すべからず努力しておる!!
マンガはじめの一歩より 鴨川会長
どこかで耳にした事がある名言ですね。
これらのように努力が大事であるという事は、子供の頃から教えられ、美徳とされてきました。
今回はその「努力が大事」という考え方を真っ向から否定する様なタイトルの本を紹介したいと思います。
脳科学者の中野信子さんの著書である「努力不要論」です。
この「努力不要」とはどういう意味なのか?
本日はできる限り簡単にお伝えしたいと思います。
どんな本なの?
さて、努力を否定しているかのようなこのタイトルですが、もちろんそうではありません。
努力こそ美徳とされ、全面的に肯定されている「努力」という存在に対して、脳科学者の視点から間違いや危険性を伝えて無意味な努力を重ねないようにする本です。
本書の冒頭で明石家さんまさんの名言が紹介されるのですが、ここに本書の伝えたい事が凝縮されているように感じます。
さんまさんがMCを務める「MBSヤングタウン土曜日」での出来事です。
この日のゲストだった、あるアイドルグループの名言が紹介されました。
ゲスト「努力は必ず報われる。信じてなかったんですけど、努力をしていれば必ず誰かが見ていてくれていて、報われる事がわかりました。」
それを聞いたさんまさんは、バッサリ切り捨てます。
さんま「努力は報われると思う人はダメですね。努力を努力だと思ってる人は大体間違い。」
さんま「好きだからやってるだけよ、で終わっといた方がええね。これが報われるんだと思うと良くない。こんだけ努力してるのに何でってなると腹が立つやろ。人は見返り求めるとろくなことないからね。見返りなしでできる人が一番素敵な人やね。」
この短い話の中にこの本で伝えたい努力の危険性や努力に頼らないスタンスが凝縮されていると思います。
さんまさんは努力を報われると思うのがダメと言っていますが、世の中では「努力すれば報われる」という考えに肯定的な部分もあります。
では、努力とは本当に報われるのでしょうか?
努力は本当に報われるのか?
よく、成功を収めた方々が「努力は報われる」と話されているのを耳にします。
その方々はきっと努力されたのでしょうし、結果として報われていたのでしょう。
ですが、本当に努力をしたら報われるのでしょうか?
この本では努力が報われるのは半分は本当、半分は嘘とされています。
半分本当というのは、人間の機能の側面からです。
人間は本来全ての力を出し切っているわけではありません。
常に全力を出してしまうと身体へのダメージが大きく、回復に時間がかかる為に自分自身でかけているセキュリティ機能です。
脳や筋肉も覚えないで済む事や、使わないで済む事は負担になるので機能を捨てるようにできています。
その為あるレベルのパフォーマンスを発揮しようと思った場合は相応の負荷をかけなければなりません。
その負荷というのが努力の事であり、努力が報われるの本当の部分です。
常に使い続けて負荷をかけるというのが努力だという事ですね。
では、半分は嘘というのはどういう事でしょうか?
才能は遺伝的に決まっています。
その人の持つ可能性の最大値までは努力で上げる事ができますが、それ以上にはならないという事です。
やればできると言うがそれは成功者の言い分であり、例えばアスリートとして成功するためにはアスリート向きの体で生まれたかどうかが99%重要なことだ。
成功者が語る事は、結果を出した事に理由付けしているというのが半分ぐらいだと思う。アスリートもまずその体に生まれるかどうかが99%。そして選ばれた人たちが努力を語る。やればできると成功者は言うけれど、できる体に生まれる事が大前提。
陸上オリンピック3大会出場 為末大
冒頭に案内した「1%のひらめきと99%の努力」というエジソンの名言も99%の努力があっても1%のひらめきが無いと無駄だと言いたかったとも言われています。
為末さんの言葉も、いくら努力をしてもアスリートとしての才能がなければ成功は難しいという内容です。
つまり、人間は必要な機能を発揮させ続けるために必要な負荷をかけるという努力は報われる。
ただし、才能がないことで努力をし続けても報われない。
努力の危険性
努力は美徳とされている為、努力をしていれば称賛されるという状態は危険だと思います。
何故なら無駄な努力になってしまっている事もあるからです。
2大無駄な努力
- 努力していると自分では思っていても、思い込んでいるだけだった。
- 努力の方向性が間違っていた。
こういった事は良くあるケースだと思います。
そして、これらの無駄な努力は時として人間をダメにする場合があります。
努力教の危険
・努力は自己満足になりがち
行動のベクトルは目的に向かっていなくても「良い事をしている」と思い込む。
・努力している自分の中毒性
人は我慢の限界を超えるとハメを外してしまう「自分は正しい事をしているから許される」
・努力によって達成したものと、生き様や姿勢を混同して美化してしまう
成功者の不幸な過去や苦労話はエンタメとしては面白いが、混同する事により価値が高まってしまう。
・努力家は他人の才能を潰す
努力に努力を重ねてのし上がってきたという人は、他人の才能を見抜いて潰しにかかってくる傾向が強い。
・努力してきた事に固執してしまう
人は努力をしてきた事ほど執着し、捨てる事ができない。
無駄な努力や報われない努力をしない為には?
真の努力をする
苦労や自己満足は努力ではありません。
真の努力というのは以下の3段階をプロセスを踏む事です。
- 目的を設定する
- 戦略を立てる
- 実行する
例えばAKB48のメンバーが語ったエピソードからも上記のプロセスについて理解できる事があります。
「AKB48の場合はダンスがうまい子よりも、できない子のほうがファンの視線を集めることができる。だから、あんまりがんばりすぎないほうがいい。」
AKB48の目的はファンを増やす事。
その為の戦略として、ダンスのスキルを上げるのは良くない。
そして実行したのが、ダンスのスキルを上げずに一生懸命踊り、ファンの視線を集めた。
【間違った努力】
ダンスや歌がもっとうまくなる為の努力
【正しい努力】
ファンから見た視線を意識した、好感度を上げるための努力
しっかり確認した方がよさそうです。
努力をしない努力をする
自分ができる事、できない事を理解するのは大事です。
それと共に自分の周りにいる人の適正を観察して自分ができない事をお願いする。
人間がこれまで繁栄してきた要因として、最も重要な戦略でした。
こうして、自分に負荷がかからないように努力をしない努力をするというのが大切です。
「人は1人では生きていけない」とはよく言ったものですね。
私も会社という組織で経営に携わり、常々感じております。
良い組織とは、それぞれの特徴を活かして仕事をし、お互いの不得手を補い合い成果を出せる組織だと思います。
まとめ
今日は、脳科学者である中野信子さんの著書「努力不要論」をご紹介させて頂きました。
以下、まとめです。
努力が報われるというのは半分本当で半分嘘。
人間は負荷をかける事で機能を発揮することができるというのが本当の部分。
才能がないことで努力をし続けても報われないというのが嘘。
努力をしていると思い込んでいるだけだったり、方向性が間違っている無駄な努力をしたりしてしまう。
そして、その努力を美徳として肯定してしまう事に危険性がはらんでいる。
そうならない為には、目的を設定し、戦略を立て、実行するという真の努力を行う。
そして、周囲の人と協力しながら努力をしない努力をする。
この本は、努力さえすればもっと良くなるに違いないという様な、努力に対する過剰な期待に待ったをかける内容です。
「頑張っても報われない、、、」
「努力することに疲れた、、、」
この様に感じている方々に読んで頂くと、少し努力との向き合い方を変えて頂けるのではないでしょうか?
様々なエピソードを交えながらも科学的根拠も添えて書かれている本なので非常に読みやすい本でした。
中野さんの本は何冊か読みましたが良書が多いですね。
また、機会があれば紹介させて頂きます。
今日は、ここまでお読みいただきありがとうございました。
それではまた!
国家資格キャリアコンサルタント 渡邊 和真